『空間の彼方に-portrait2-』 2019/05/27 SecondRooms(京都)

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こんにちは。ピアノ弾きたがりシンガーソングライターのヨシミチアキです。

突然の猛暑と体調不良のダブルパンチで電車乗った途端意識が空間の彼方に行きそうになりまして、慌ててて降りたら桂川だったという驚異のボケをかまし、リハにはギリギリで到着、自分大丈夫かなと思いました。

そんな幸先の悪いスタートのイベントはこんな感じでした。

目次

詳細

タイトル:空間の彼方に-portrait2-

日付:2019/05/27

場所:SecondRooms(京都)

出演(敬称略): 伊和月文奏 ちょちょ ilis

曲目

  1. きぶんじゃないのに
  2. 阿頼耶の鳥
  3. 祈りの炎
  4. いいから

所感

タイトル通り、共演者の皆様に空間の彼方に連れて行って頂きました。良かった。

私は音楽に限らず趣味が偏ってるので、「これ好きそう」っていわれるのが「全然ちゃうやんけ!! お前なんでそう思ったんじゃ!?」(滋賀弁丸出しガラ悪いわ)ってことが多いんですが、その辺は『愛と信頼の川上マート』って感じですね。私は川上氏のセンスを疑ってない。

やっぱり好きな歌唄ってる人と一緒に出ると、モチベーションも上がりますしね。

 

ilisさんはノスタルジックで暖かくて少し淋しげな世界が広がりました。

子供の頃夕日の差し込む部屋でみてた『みんなのうた』みたいな感じ。『まっくら森の歌』とか『メトロポリタン美術館』とかね……。レスピーギの編曲で有名なリュート曲『シチリアーナ』を思わせる雰囲気もありますね。

音楽聴いてると脳内MVを勝手につくるんだけど、実写のときとイラストのときがあって、彼女の唄はセピアがかった紙に硬めの鉛筆とパステルで描かれていて、全体的に藍色と紫と黄色のグラデーションが薄くかかってるイメージです。ちょっと銀色のラメもかかってるかな。

『時効』すごーく良かったなあ。

歌詞に込めたメタファーもさることながら、短調と長調が交わりながら進んでいくメロディが昼と夜の入れ替わりを表現しているようで、言葉とメロディと本人の声がきちんと機能してる一曲だと思いました。ほんと物語の世界に誘われる感じなので一度聴いてほしい。

 

ちょちょさんは「目の前にいる人に伝えたい!」という気持ちが強く伝わってきて、自然と笑顔になれるのが魅力ですね。なんかわからんけど、自己紹介の歌聴いてて泣きそうになりました。純粋さに当てられました。

彼女の歌は太陽の乱反射する光を感じますね。水面にきらめく光って感じ。

風邪でつらそうにしてたけど、「ステージでは今日は調子悪くてとかいうの嫌で」といってて、そういう気持ち大事ですよね。健気ですよね。そりゃファンもでっかいぬいぐるみあげたくなるわ。

マイクから離れてもめっちゃ声出てる〜と思ってたのに、あれで「声出てませんでした」とか意味わからんどうなってんの。本調子のときどんなんなん、口からCD音源やん、といったらめちゃウケでした。

 

伊和月文奏(いわづもがな)さんはクチナシという世界を題材に歌を歌っていらっしゃいます。

勝手にハイファンタジー風なやつを想像してたので、事前に見てたMVや一曲目が、あちらの世界はわりとこちらの世界に似てるのかしら? と思ったんだけど、『ロアの塔』でどういうことか飲み込めました。

昔々とても高い塔があって、誰も登りきったという噂がない、という語りだしなんだけど、後半でそれは長い年月のあいだに崩れ落ちて今や街ができ、それは伝説となってしまった、諸行無常の響あり、みたいな風になってくるわけです。あちらの世界も神代の時代から近代化にいたるまでの長い時が流れているのですねえ……羊皮紙の年代記(ここに《クロニクル》とルビをふりたい中二心)が見えるようでした。

となると、この伊和月文奏という人物はクチナシでも特異な存在なのではないか、とか想像が膨らみます。

もちろん近代の人物であって、昔のことは伝聞で唄ってるだけなのかもしれないけど、こっちの世界と行き来できるんですからマトモな存在じゃないんでしょう。

クチナシという名前も、世界には口がないからなのか、思いが朽ちないからなのか、とか考えますねえ。今後も彼の歌う世界から目を離せません。

ちなみに、世を忍ぶ仮の姿は人懐っこい青年でありました。こちらの世界の生活でもいろいろあるようですが、「音楽が好きです」といい切れるのは清々しいですね。

 

でね、自分もストーリーテラー風の演出をしはじめたわけですよ。本格的に。
前口上はなかなかお気に入りですが、声が小さかったな。

本格的にというのは、実は『いいから』の直前の「この世界の真実だ」っていうMCは以前そういう試みをしたときの名残なんですね。

その時は客席の静まり具合に怖気づいてどっちらけになってしまったのですが、どうしてもこういう演出を諦められなくてですね。

今回はアップライトで客席に背を向けてるし、自分の世界に入りきってしまったんで、演出としてはうまくいったようです。ばっちり空気を読んで曲間に一切拍手しなかったお客様もありがとう、そしてありがとう!

あとは演奏をバッチリ決めるだけだな……(毎回いってら)。

タイトル未定だった新曲、あれこれコネコネして『阿頼耶(あらや)の鳥』というタイトルになりました。

これわざと耳で聞いてもわからん歌詞にしてるんだけど、「蔵識(ぞうしき)の深さを懐かしむ鳥よ」という歌詞がでてくるんですよ。この蔵識っていうのは、仏教用語でして、平たく言うと、この世を構築するすべてのデータが収まっている巨大なクラウドサーバ、みたいなもんです。

またの名を阿頼耶識(あらやしき)。この阿頼耶が何かというと、サンスクリット語のアリーヤ、「蔵」の当て字なので結局は同じことですね。

この歌が仏教的な内容かといえばべつにそうでもない。かっこいいから使ってるだけだ。

今後の改善点は山ほどあるんだけど、自分の持っているものを全部出せた感じがして、次がやりたい! たくさんの人に見せたい! っていう気持ちが湧いてきましたし、やりたいこともいっぱい出てきました。こんな曲が作りたいとか、こんな演出がやりたいとか。もっとバチッとやりたいとか。

意識が変わったという点で、とてもいいライブだったと思います。

こういう感覚は本当に久しいです。活動三年目くらいで完全に潰えてたもんそんな気分。

去年の今頃とか辞めてもいいと思ってたしな。ほんま腐ってたぞ。

なーんか好きになれなかった「世界観すごいですね」もね、素直に「でしょ? いいでしょ?」と思えるようになったし。次はもっといいライブを作るぞー!

イベントに関わった皆様、ここまで読んでくださったあなた、ありがとうございました。
また別の記事でお会いしましょう。